ミル・コメディ ― 聽えざる分身

yxetm+ Yurihito Watanabe
 L i s t e n N o w !

渡邊ゆりひとの音楽を聴くと、亡霊たちが冷気を放って廃虚をさまよっている思いがする。ジャン・コクトー
の『オルフェ』がこの舞台装置においての亡きを偲ぶ実体であり、そこではエドガー・アラン・ポーの「アッ
シャー館崩壊」にみられる感覚の異常過敏が充満している。ビクトリア&アルバート・ミュージアムで開催さ
れた展覧会『ラディカル・ファッション』には、彼のサウンド・ピースを、ジャン=ポール・ゴルチェのセク
ションに纏めることにした。記憶の屈折による奇妙な感じ、つまり、もうひとつの歴史が空間内に現れるよう
に。分類により時を封じ込め、体験を切断する一九世紀の博物館が、非時間的感覚、振動の強度、詩の錬金術
により体験されるように。[デヴィッド・トゥープ]


聽えざる分身、あるいは、声。記憶ではなく、歴史の周辺へと蹴り出され、人々の黙秘のうちに忘却されてし
まった ― 場所、肖像と手紙、暦の掛けられた部屋 ― それら刻限の裂目へと降りて行く粒子状の身体のよう
に、声は聽き入る。このコレクションにある雰囲気。打捨てられたもの、廃れたものへの嗜好は、単に編纂者
の趣味によるものだが、ひとつの考古学的な手つきが、死を奪う者、死を奪われる者、その両者の「悪い痛み
について」の物語を象っている。事物の振動を呼吸するように、それは何某かを表現しているというにはあま
りにも体験的な、振動の強度、感覚の塊に過ぎない声である。



収録曲
2001年、『ラディカル・ファッション』ビクトリア&アルバート・ミュージアム、『The Door Practice』
オルタナティヴ・アート・スペース改善、『十時間』サンフランシスコMOMA のために制作された、三つのイ
ンスタレーションのための音楽を収録する。
番組では、三つの作品のエディットバージョンを提供。

AP1015 2,625yen



バイオグラフィ
1962年1月19日
東京に生まれる
1970年代
デカダンス ポオとネルヴァルの下で
詩と音楽の始まり  錬金術の図版
1980年代
書物
マラルメの白い亡霊
中世の音楽と写本
ジャルゴン 即興 
そして 能楽と沈黙
1990年代
高原にて 白い人

   不純な言語 
器官の破砕  倍音上のグロッソラリア
振動の強度
身体とコンピュータ  サウンドと黙秘